Classiques japonais avec furigana
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こういうきもち
斯ういう気持
宮本 百合子
Lisez 斯ういう気持 (こういうきもち) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 379 caractères · 9 écrans
外光に近く置かれると、ほんのり端々で紅らんだ白桃の花は、ことの外美しかった。彼等は平和に其を眺め乍ら茶をのんだ。
五時頃、晩の買物に出かけようとして、愛はやっと忘れて居た金入れのことを思い出した。先刻、せき立てられてそのままにして仕舞った新聞の間を、丁寧に調べた。――無い。直ぐわかるつもりで膝をついて居た彼女は、ちゃんと畳の上に坐り込んだ。更に念を入れて、茶箪笥の引出しまで見た。やはり無い。……
愛は、丸まっちい顔に困った表情を浮べた。彼女は、生れつき、決して行き届いた始末屋ではなかった。彼女が、ここに置いたと思い定めて居た細々したものが、ここにはなくて案外な隅っこで見つかることはこれ迄も珍しくなかった。愛は立ち上り乍ら
「どこだろう……」
と、自信のない独言をした。然し、確に昨夜、食事に小幡をこの部屋へ案内する前、雑誌や新聞をこの隅に重ねた時、間に、フランス鞣に真珠貝のボタンのついた四角い小銭入れが在った覚えがある。考え出そうと頭を傾げ乍ら戸棚の奥まで徒に探した愛は、急に何か思い当て嬉しそうに柔かい毛足袋の音を立てて二階に行った。禎一は、机に向って居る。