Classiques japonais avec furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lisez 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 247 330 caractères · 497 écrans
お嬢さんは千代子さんと云って、初めて行った私を十年のお友達のように話して下すった。厚いアルバムか出ると、一枚一枚繰って説明して下さる。この役者は誰、この女優は誰、その中に別れた男のプロマイドも張ってあった。
「女優ってどんなのが好きですか、日本では……」
「私判らないけど、夏川静江なんか好きだわ。」
私はいまだかつて私をこんなに優しく遇してくれた女の人を知らない。二階の秋田さんの部屋には黒い手の置物があった。高村光太郎さんの作で、有島武郎さんが持っていらっしたのだとかきいた。部屋は実に雑然と古本屋の観があった。談話取りが談話がとれなくて、油汗を流していると、秋田さんは二三枚すらすらと私のノートへ手を入れて下すった。お寿司を戴く。来客数人あり。暮れたのでおくって戴く。赤い月が墓地に出ていた。火のついた街では氷を削るような音がしている。
「僕は散歩が好きですよ。」
秋田氏は楽し気にコツコツ靴を鳴らしている。
「あそこがすずらんと云うカフエーですよ。」
舞台の様なカフエーがあった。変ったマダムだって誰かに聞いたことがある。秋田氏はそのまま銀座へ行かれた。
私は何か書きたい興奮で、沈黙って江戸川の方へ歩いて行った。