Classiques japonais avec furigana
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しんしゃくしょこくばなし
新釈諸国噺
Lisez 新釈諸国噺 (しんしゃくしょこくばなし) de Dazai Osamu (太宰 治) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 93 562 caractères · 179 écrans
」と駒に打ち乗り、濁流めがけて飛び込もうとするので式部もここは必死、篠つく雨の中を蓑も笠もほうり投げて若殿の駒の轡に取り縋り、
「おやめなさい、おやめなさい。式部かねて承るに大井川の川底の形状変転常なく、その瀬その淵の深浅は、川越しの人夫さえ踏違えることしばしば有りとの事、いわんや他国のわれら、抜山の勇ありといえども、血気だけでは、この川渡ることむずかしく、式部はきょう一日、その水癲癇とやら奇病にでも何にでも相成りますから、どうか式部の奇病をあわれに思召して、川を越える事はあすになさって下さい。」と涙を流して懇願した。
まことの臆病者の丹三郎は、口ではあんな偉そうな事を言ったものの、蛸め、つづけ! と若殿に言われた時には、くらくらと眩暈がして、こりゃもうどうしようと、うろうろしたが、式部が若殿をいさめてくれたので、ほっとして、真青な顔に奇妙な笑いを無理に浮べ、「ちえ、残念。」と言った。
それがいけなかった。その出鱈目の言葉が若殿の気持をいっそう猛り立たせた。
「蛸め。式部は卑怯だ。かまわぬ、つづけ!」と式部の手のゆるんだすきを見て駒に一鞭あて、暴虎馮河、ざんぶと濁流に身をおどらせた。