Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
「千鶴子さんはいつごろ帰る予定ですか。」
「あたしはいつだっていいんですのよ。ただね、暇なうちに一度こちらを見ておかないと、女ですから、見る機会がなくなるでしょう。」
「じゃ、なるたけ今のうちに、いろんな所を廻られる方がいいな。でも、よく御両親があなた一人を放されたものですね。」
と矢代はいつも訊き忘れていた疑問を自然に訊ねてみるのだった。特別に信用されている自分を説明するのに困るらしい千鶴子は、
「それや、兄がこちらにいるからでしょう。別に何も云いませんでしたわ。」
と短く答えた。
「しかし、兄さんも御心配じゃありませんでしたか。パリへあなた一人でいらっしゃるの。」
「そんな事、兄なんか心配してくれるものですか。それに、お船の中のお友達のこと、あたし兄に話したんですもの。」
矢代は黙って頷いたが、千鶴子の一人旅は良い結婚の相手の選択の機会を彼女に与えるために、兄も両親も赦したのにちがいないのであってみれば、自分が千鶴子へ馴馴しくすることは、それだけ彼女の良縁を払い落す結果になっているのかもしれぬと思った。
しかし、ヨーロッパへ来る婦人たちは、男性と違って自分の研究目的を明らさまにするのを嫌う習癖の多いのを聞き知っていたので、千鶴子もこれでひそかに研究する何事かあるのだろうと矢代も思っていたのだった。