Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
しかし、すぐ次ぎに、アルマンの熱情こめた少し野暮ったいほどの純情な眼で、マルグリットをじっと見詰めている燕尾服の姿が現れた。その姿をひと眼見たとき矢代は、あの獲物を狙う鷹のような露骨な眼つきはとうてい日本人の自分には出来そうもないと思い、外人のピエールなら或いはそれが難なく出来るのかしれぬと想像され、時間の進行につれだんだん千鶴子の身辺が危かしく気遣われて来るのだった。それにこの美しい透明な旋律である。ピエールだってそのままの筈がない。――矢代は次第に迫って来る暗鬱な恐怖に意外な芝居になって来たぞと後悔さえし始めた。
舞台ではアルマンを中心に手管の巧妙な遊蕩児の伯爵や男爵の酒の飲み振りの場がつづいた。そのとき突然ばったりマルグリットが倒れた。人人が追って来る。それを片手の手巾で追い散らし、ただ一人になったマルグリットの苦しげな傍へ、アルマンが来た。そして、真心こめた日ごろの想いを打ち明け出した。
矢代はふとそのとき、千鶴子が自分を今夜ここへ呼び出したのは、実はここを自分に見せたく思ったのかもしれぬとそのように思った。すると、ただそれだけのことで場面はまた俄に自分の味方のように明るく見え始めて来るのだった。