Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
眼前の継ぎ目のない沼はすべて絵だと思っても、天井の適度の光線の加減に応じた遠近法で、絵もこんなに事実の自然に近づくものかと矢代はいつもここで驚いた。
「やはりこんなところをパリの人も欲しいのね。」
「それや、欲しくてたまらないんでしょう。それにこのベンチの置き方も上手いですよ。こうしていると自分が人間だと思わないんだもの。」
「あら、そうね、蛙ね、まア面白いこと。ほんとにあたしたち蛙だわ。」
千鶴子は再び背のないベンチを矢代と反対の方へ向き変って足を組んだ。睡蓮の花の間に渦紋の漂い密集した浮葉の群青のその配置は、見れば見るほど一つとして同じ形のもののない厳密なリアリズムの沼だった。
「東洋人が自然にうんざりしてしまって、科学がほしくてたまらないときに、こちらじゃもう科学にはうんざりして、自然がほしくてたまらないんだな、もう精神が科学に疲れきってしまっても、まだ科学的な厳密さより信用しないという絵だ。人間は、いったい、どうなるんだという、これは地獄絵だ。そうだ、久慈をひとつここへつれてくるんだった。」
こう云って矢代は起き上ると頭は自ら空を仰ぎたくなるのだった。