Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

風に揺れている梢からもれた日光が倒れた草にあたっていた。鶯がまだここでもしきりに鳴きつづけたが、もうあたりに花は一つも見えなかった。どこか向うの草の底から低い欠伸が聞えた。あたりに少しも人の気がないように見えていながら、実はここはそうではなく、到るところにいるらしい。まもなく低く音読するフランス語が欠伸とは違う方向の草の中から聞えて来た。大きな声で話していた矢代も急に客間へ出されたように声をひそめた。

「これや、蕨の原っぱどころじゃないぞ。あちこちにいるんだ。」

「そうらしいわね。」

下手な手つきで煙草を吸っていた千鶴子は、突然そのとき俯向いたまま苦しげに咳き込んだ。驚いて矢代は見ると、千鶴子の吐きつけた煙が地肌にこもって、あたりの草の複雑さに応じつつ下からゆるやかに跳ねのぼって来た。

「横着をするもんじゃないわ。おお、苦しい。」

涙を泛べてまだ咳きつづけている千鶴子の耳の縁に、赤い斑点のある丸い小虫が這っていた。矢代は虫を払い落して軽く千鶴子の背を叩いた。咳き熄んだ千鶴子と矢代はもう黙った。微風が吹くと森の木の香が新しく蘇った。胸が草で冷めたい。千鶴子は延ばした腕に頬をつけ、草の根をむしりながら低い声でパリの屋根の下を口誦んだ。