Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

A社からは、いっぺんもわたしは頼まれた覚えはないのに、どうしたことかと思ってるんですがね。おかしいなア。」

矢代は半ばまで聞かないうちに南の不思議がるのは尤もだと思った。実は矢代もT社からフィルムを頼まれて、現に棚の上に置いてあるので、南の頼まれたフィルムの実物を、矢代が代って持っているというわけだった。

「T社のは僕が持ってますよ。」と矢代は云って笑った。

「ヘエ、あなたが――じゃ、わたしのはなんだろう。」

ベルリンのオリンピック競技がまだ後四日も残っているという日だから、そんな途中に日本へ帰るものなどいない日のこととて、シベリヤ廻りの旅客に封切り用のフィルムを日本まで依頼する苦心は各社とも血眼だった。殊に矢代の帰る際のはマラソンを映したものであるだけに、一番重要なフィルムであった。またこれを封切る早さの勝負が、各社の能力を顕すものと一般に思われがちであったから、客も新聞社から頼まれればその熱意に動かされ、自然に二社の激しい競争の中に巻き込まれざるを得なかった。こうしていつの間にか、矢代も南も同車の敵という運命に置かれてしまっている二人だった。

「しかし、わたしはたしかにT社から頼まれたんですよ。