Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
最後の車のため人込みから離れた端れの柱の傍で、夏羽織の背の低い父の姿がすぐ彼の眼についた。父は暫く矢代を見つけなかったが、彼の方から片手を上げて父の方へ歩いてゆくと、父は「あッ」と口を開き、そのまま無表情な顔で近よって来た。その後から見えなかった母が小趨りに追って来た。矢代は父の前で黙ってお辞儀を一度した。非常に鄭重なお辞儀をしたつもりだったのに、妙に腰が曲らず軽くただ頭を下げただけのような姿になった。
「どうも御心配かけました。」
と矢代は父の後ろの母を見て云った。
「お帰りなさい。」
母は矢代の顔を見ず羞しそうにそう云っただけで、重ねた両手を中に縮まるような姿で立っていた。父も母もさて次ぎにどうして良いのか分らぬらしく動かなかったが、矢代もやはりそのままだった。その間も東京駅の光景が薄霧の中から、見覚えのある活気を漸次鮮明に泛べて来た。赤帽が荷物を運んで行く後から三人はホームを出た。矢代は靴でしっかり歩いている筈なのに、まるで地から足が浮き上り、身体が絶えず飛び歩いているように思われた。障壁が尽く取り脱された自由な気持ちに、彼は自分がひらひら舞っている蝶に似て見え、眼につくあの灯この灯と広場の明りを眺めながらまたタクシを待った。