Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
またそれから来る自然な連想に伴って、千鶴子をガラシヤに似せて考える矢代には、ガラシヤにキリシタンを説いてやまなかった高山右近の心情も思い出された。そんなガラシヤと忠興と、その友人の右近の親しくした日日の交際も、また云いかえれば、千鶴子を中にした矢代と久慈との交際の日日と同様にちがいなかったと、矢代は、思うのであった。そして、このままもし、自分が千鶴子と結婚するような結果にでもなれば、右近のように西洋に憧れつづける久慈のことであるからは、あるいは、忠興とガラシャの間にカソリックの水をさし注いで絶えず二人をまどわせた右近のように、うるさい日日のもつれも生じる惧れなきにしも非ずと思われる。
「親も捨てよ、兄弟も捨てよ、主人も捨てよ。そして、ただ天主でうすを信ぜよ。」
とこういう熱烈な口調の右近の言葉にしだいに動いて行くガラシヤ――そして、この世にも早や希望を持たぬ彼女の信仰の生活に似て、千鶴子も事あるごとに西洋の神を拝しつづけ、主人の自分を想うことが、取りもなおさずヨーロッパの幻影を失わぬためだとすると、戦国の世ならずとも自分の苦しみは忠興の悲劇とさしたる変りもあろうと思えなかった。