Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
しかしたいていはそうじゃないよ。僕はやはりそれが心配だ。巴里祭の日に君が殴られたのなんて、あれは君、それを知ったものと、知らぬものとの間に君は挟まれて、両方から殴られたのさ。そして、シャッタを切ったのが、つまりこれだ。」
と矢代はそう云いつつ写真の中からサンゼリゼの激動の場をめくりあて、塩野に差し出した。
「君は知らないだろうが、このときの君の顔を、ちゃんと僕は君の親父さんに代って見てるんだよ。無我夢中で君は飛び上っていたよ。真ッ青になって、横っちょになって、――あ奴、やりよるなアと思って僕は見てたものだ。おやじだよ僕は。」
塩野は「ふふッ」と笑みを洩してまた暫く写真を眺め直した。
「思い出すなア。このとき中田教授は僕の傍で、日本がこうなられちゃ、これやたまらんと呻いたが、どうしているかなアあの人。」
中田という政治学の大学教授はよくパリで矢代にも、論理の大切さを何より主張してやまなかった合理主義者だった。塩野はこの教授の説の正否などはどうでも良く、自分の扱い馴れた愛機のカメラの眼といつか心も近くなっているのであろう、ただ教授の人格に感服していた。矢代も中田の云うことよりも人間の方が好きだったが、いまもし会って、自分がひそかに先日以来感じている不合理な千鶴子との夢の結婚を中田に話したら、必ず自分を蛮人だと思っ