Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
「ここの浴場は見事だなア。こんなに家全体で浴場を持ち上げているような風呂場は、僕は見初めだ。」
と矢代は番頭に褒めて云った。
「そうですが。皆さん風呂場だけは、まア褒めて下さいます。」
塩辛声の番頭を前にして、矢代は、ハンガリアのダニュウブ河の岸にあった温泉を思い出し、そこがここに一番似ていたと思った。彼は番頭に山小屋での自炊用の薪や、調味料などの世話を頼み、暫くの浴場もこの宿のを借りることにして、明日からの小屋の生活を楽しみにした。
矢代は寝る前に音信を忘れていた知人たちへ手紙を書いた。彼は外国へ行ったことの利益のうち、省みて生活に直接役立ったと思うことは、何より自分が無慾になったことだと思っていたので、千鶴子へ出す手紙の中にも忘れずそのことを書き加えた。また結婚のことも考えると、まだ一度も自分が千鶴子にそんな意志を表示したことのないのに気が付き、千鶴子の待ち受けているのは或いはそれかもしれないと思ったが、しかし、特に結婚の申し込みをしなければならぬほど疎遠な間柄でもないと思い、やはり筆にまですることは差しひかえるのだった。自分に自信があるからだと云えばそのようなものだった。