Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
自炊はさして面倒なものではなくむしろ楽しかったが、後の洗い物が苦手だったから、これは附近の老婆に御飯と一緒に頼むことにした。
二三日は矢代は小屋からあまり外へ出ず書物ばかり読みつづけた。宿から初め小屋に移って来たときに感じた辛さは、宿で女中に見張られた気苦労よりも暮し良く、この生活は自分の理想の一つだと思えたほど退屈もしなかった。ただこの生活にもし書物がなかったら、恐らくこうして二日とはいられぬだろうと思うと、窓の外いちめんの白さが、ふと恐るべき退屈の塊りのように見えた。シベリヤを通ったとき矢代と同室の南が、十年前に一度雪のそこを通った景色も忘れたことを話し、
「あのときは雪が降りてたから、外なんか見なかった。いや、しかし、今度は驚きましたね。」
と、シベリヤの広さに驚歎したのを矢代は思い、十日余りも続くあの地の真白な世界を想像してみて、その途方もなく巨大な白い塊の中に生活して来たロシア人の表情も、所詮は、我れ識らずに退屈と戦って来た長い苦しさかも知れぬと思ったりした。退屈しのぎにせっせと人殺しをすることを書いた帝政ロシアの小説を、矢代はいつか読んだこともあった。