Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

互いに慄える手を探り合って握りつつも、どこかに身の近づけぬもののある画廊ながら、矢代は、もしこれで千鶴子にいのちを失う踏絵のような場合が来れば、あの、細川ガラシヤの死の苦痛を軽めで死んだ小笠原少斎のように、自分もともに千鶴子と死ぬかもしれないと思った。

「このかた、田辺侯爵。」

とまた暫くしてから塩野は矢代の傍へ来て云った。一度は会うことを約束されていた人が、いよいよ初めて顕れた緊張の仕方で矢代は礼をした。西洋での侯爵の日常をおよそ聞き知っている矢代だったが、想像とは違い侯爵は無表情なのどかな丸顔で、ポケットから手を出し黙って無造作な会釈をしただけだった。

田辺侯爵にはどこといって目立った所はなかった。しかしやはりその無表情な、一見平凡に見えるところに、油断の出来ぬ人を素直に眺め感じる静物のような品と、城主の位とを具えていた。こういう垢脱けのした人物は一番恐るべき人で、また気兼ねのない伸びやかさを人に与えるものだった。

「どうも疲れた。いっぱいお茶を飲みたいが、一寸行くかな。」

塩野は主人側の遠慮のある表情で、脱け出す機会を覗いながら、それでもまだ続いて顕れる知人の方へ忙しく歩を移すのだった。