Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

取り替えた着物もさっぱりとしていつもより母は若く美しかった。

医者は矢代より先に玄関を上ると無造作に障子を開け、襖を開けて父の寝ている部屋を直感しているらしくどしどしと奥へ通った。そして、矢代が家を出るときと同じ様子で倒れている父の襟を大きく開き聴診器を胸にあてた。厚く逞しい父の胸部には起伏もなく色も早や幾らか変っていた。診察を終ってから、医者は傍に坐っている矢代と母の方に対い、

「御愁傷なことでございます。」

と一言低く云った。医者の帰っていったその後から、矢代も何んとなくまた家を出た。

門灯の光りのとどかぬ雪の上には、矢代と医者と二人の通った跡だけ窪んで見えた。その窪みの中へ足を入れて歩く間も、矢代はさまざまなことが頭に泛んでまた消えた。

檜葉に積った雪がトンビの羽根に擦れこぼれていった。彼は雪の中を見廻し、あらためて父の死が本当のことかどうか験してみたくなったほど、どこか胸の中心が痺れ、そこだけ脱け落ちたようにしんと静かだった。

しかし、いったい、これが死だろうか。

あッという間にどこから躍り出て来たものか、とにかく、あたりの闇の中にそれがいたのだ。