Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
この中では、二人だけ血のかからぬ他人であった。その悲しさの薄さはやむを得ないとしても、長い休息のその間を愉しそうにも出来ぬ二人の忍耐を思うと、喪主の疲れの鈍感さで、矢代もようやく二人が気の毒になって来た。そして、
「どうも今日は、すみませんね。」
と、彼は突然千鶴子に対って云い遅れた礼をのべるのだった。
「いえ、あたしこそ――」
千鶴子が一寸彼を見て俯向く風情に小声で云うのを、やはり、自分の悲しみを別け持つことに努めていてくれたものの一言だと、彼はたしかな喜びを覚え、懐中に潜めたまままだ封も切らぬ手紙のこともちらりと頭に泛べたりした。
火葬の準備の出来た報せが来て一同は茶店を立った。竈場の周囲の常緑樹の葉の色が、ここのは特別に際立って鮮やかだった。柩を降ろした空の霊柩車が、日蔭に落ちている氷を踏み割って去っていった。その後からまた新しいのが入って来たりして、幾つもある同形の柩の中から、矢代は父のを見わけてその前に立つと、抱きかかえたときの重量が急に目前の閑寂な白い方形から射し返して、ずしりと引き込まれたように切なく胸が詰って来た。聞もなく、竈の観音開きになった鉄の戸が左右に開いて、そして、父の柩はそのまま狭い口へ詰め込まれた。