Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

」と矢代は柘植の新芽から眼を放して千鶴子を見た。

「こんなときさし上げて、いけなかったんじゃないかと心配だったの。あれもう御覧にならないで、破っといていただけませんかしら。」

摘み取った柘植の葉を掌の上に乗せ、極まり悪げに身を左右に廻して、そういう千鶴子を矢代は何んとなく見て笑った。

「どうしてですか。」

「でも、何んだか変だわ。あなたのお悲しみのときなのに、あんなこと書いたりして。」

どんなことかまだ彼には分らなかったが、しかし、どこまで落ち込んで行ったかもしれぬ今日の悲しみの途中で、それを、ふと支えてくれたのは、争われず千鶴子の手紙だったと彼は思った。それも、やがてはそこから再び転がり落ちてゆく自分の悲しみだと思えても、今はまだそれを支えてくれる力が手紙にはあった。

そのうちに竈場の屋根の煙突から煙が昇り始めた。矢代の体も火が入ったように熱く感じた。

「お父さん死んだんだと、どうしても思えないわ。こんなに温いんですもの。」

と幸子が云って、父を棺へ入れようとしなかったときの、あの張りのある反抗を彼は思い出すと、いま昇っている煙など妹に見せずにいて良かったと彼は思った。