Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
殊に真紀子の身の上は同情に値いすることが多かった。しかし、いずれにせよ、そういうことを一応空想の中に入れて考えても、外国にいるときの生活から推し測って、そのものの内地にいるときの生活は分り得られないことであった。またそれは彼女のみとは限らず、現に矢代は、あれほど親しかった久慈や東野の内地の生活もいまだに分らぬままに捨ててあった。それも一つは、まだ消え去らぬ西洋の幻覚の仕業とも解せられれば、個人に対する興味などおよそ物の数ではなくなっている、茫漠としたある観念に絶えず憑かれた、他の多くのものにも共通した旅愁ともいうべき旅人の特長だった。まったく事情の違う西洋という抽象の世界に急激に入り込んだものに突発して来る旅の錯乱に、批判の根拠の移動する不決断に伴って当然に起る、自己喪失の病いを植えつけられ、自分を蔑視する苦しさもあきらめに変えてしまう。そのような内地にあり得ぬ不具者となって帰朝して来るものの多い中でも、東野はまだ東洋人の精神を喪っていない方の一人だった。実際、西洋の旅は、東洋人にとっては難かしい狂いの連続といえばいえるものだと、矢代は、欄干に巻き結ばれた船のと纜に凭りかかって考えるのだった。