Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
よほど話が整って来たよ。」
由吉はパイプに火を入れて云ったが、もう今は彼について笑うものもなく、海からの夜風にガラスの冷えて来た部屋の中で、一枚の白紙に吸いよせられたように、一同は妙に静になってしまった。平尾男爵は手帳を出すと、「千八百七十七年と。カントルだね。」と呟いて記入した。そして「僕も帰り着いた夜、こういう風向きになろうとは思わなかったな。しかし、これで多少は僕の研究に方向がついて来たよ。東野君、君の専門の方はどうかね。その千八百七十七年前後のあたりは?」と訊ねた。
「そりゃ、勿論、立体も平面もこの世から姿をかき消した時代だよ。何しろ明治十年というと、西南戦争のときだからね。あのころは、隆盛の細君が香銭七百円もらって、突き返して人気が出るやら、吉原の女郎が洋装してみな並んでみたりするやら、そうかと思うと、そうそう、たしか、湯島に数学会社というのが出来た年だよ。会員が九十名だ。医学会社というのも出たね。何んでもやたらに、資本金七万円、五万円という会社が出始めたりしているよ。柳原愛子皇太子を分娩す、なんて新聞記事があの年に堂堂と出ていたのを、何んかで見たことがあるね。