Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

「有りがとうございます。」

矢代は尋常にこのとき返礼だけは出来たが、それでもぼッと熱気に蒸されたような困迷を覚え、却って落ちつき払ったように身体がそこに突き立ったままだった。

「しかし、もうお暇も出来たでしょう。お父さまの御病気は?」とまた男爵は優しく訊ねた。

「脳溢血です。」

「ほう、それじゃお名残り惜しいですね。お幾つでした。」

「七十一です。」

「じゃ、わたしとあまり違いませんね。そろそろわたしにも廻って来ますかな。」

気軽く笑いつつも微妙な変化を示す男爵の前にいると、矢代は、ふと自分の中に父もともにいるような重圧を感じ、生前男爵に抱いた父の気持ちがそのまま姿勢にまで加わろうとするのだった。彼の頭の高さも父から叱りつけられるようで、たしかに先日侯爵邸で会ったときとは、また別した渦巻きを体内に感じ、ともすると表情も固まろうとするのを、彼はようやく平素のままに心を支えて帰りを急いだ。

「今夜のお話はたいへん結構でした。もう少し精しくお訊きしたかったのですが、今日は友人が多いものですからこれで失礼します。」

エレベーターの扉の中へ皆の這入るのを眺め、矢代も久木男爵にそう云って後から自分も入った。