Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

「どうしょう。休まして貰うか。」と塩野はまた矢代を見て訊ねた。

今夜は千鶴子の家まで送ろうと、横浜でそう云い出したのは矢代自身だったが、それも中へ入るつもりの毫もなかったこととて彼は返事に窮し、「しかし、もう遅いからここでお別れにしよう。」と云って停った。

「でも、ちょっとお茶でもめし上ってらして――」

と、今度は千鶴子は矢代にはっきりした笑顔で云った。このときは前のためらいも消えていて、いずれ来るものは来ると即座に決断した女性の大胆な変化が見えた。チロルで氷河を渡ろうとしたときも同じ落ちつきで、ぐんぐん彼を氷の中へ誘い込んだのも、ちょうどこんな千鶴子だった。

しかし、いずれにしても、今この門を潜るのは少し無謀なことであった。思慮あれば避けるべき筈の場合だったが、門柱の横の潜戸の中へ消えた千鶴子の後から、何んの相談もなく続いて塩野も潜ると、矢代は自分ひとりそこから去るのも、むしろいかがわしい咎めを残すばかりに感じられ、特別な一大事の前後の処置とは思えぬ気軽さで彼も潜っていった。そして、底白い砂の拡がりを踏みつつ彼は、いちいち自分の微細な動作まで手にとるように分る緊張にも拘らず、どこかぶらりとした旅ものめいた暢気さもあって、まだ見ぬ千鶴子の母に会う興味さえ覚えて来るのだった。