Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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にほんのでんせつ

日本の伝説

柳田 国男

Lisez 日本の伝説 (にほんのでんせつ) de 柳田 国男 (やなぎたくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 104 931 caractères · 207 écrans

Aozora Bunko

後にこの家の地蔵様を拝もうとして見ると、背中に箭が立って、田の泥が足についていた。こういう水引地蔵の話も古くからありました。また筑後国の田舎では、八講の米を作る田へ夜になると水を引く者がある。村の人が大勢出て見ると、若い法師が杖をもって田の水口に立ち、溝の水をかきまわしているのが、月の光でよく見えました。杖を流れに入れて掻くようにすれば、細い溝川が波を打って、どうどうと上手へ流れ、水はことごとくその田にはいりました。これも箭を射られて後で見ると、地蔵の背中に立っていたといいますが、その箭が山鳥の羽をもってはいであったというのは、前に申した足利の片目清水と似ています。この不思議に恐れ入って、その田を寄進してお寺を建て、それを矢田寺と名づけたということであります。

こういう話は、地蔵様でなくても、或は上総の庁南の草取仁王だの、駿河の無量寺の早乙女の弥陀だの、秩父の野上の泥足の弥陀だのというのが、そちこちの村にはあったのですが、その中でも一番に人間らしく、また子供らしいことをなされたのが地蔵でありました。仏教の方でも、地蔵尊は人を救うために、どこへも行き誰とでもお附き合いなさるといって、つまらぬ旅僧の姿で杖を持って、始終あるいていられるように考えていますが、日本の話はそれだけではないようであります。