Classiques japonais avec furigana
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あべいちぞく
日本の文学 3 森鴎外(二)
Lisez 日本の文学 3 森鴎外(二) (あべいちぞく) de Mori Ōgai (森 鴎外) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 545 caractères · 140 écrans
兄弟同時にした疱瘡が、兄は軽く、弟は重く、弟は大痘痕になって、あまつさえ右の目がつぶれた。父も小さいとき疱瘡をして片目になっているのに、また仲平が同じ片羽になったのを思えば、「偶然」というものも残酷なものだと言うほかない。
仲平は兄と一しょに歩くのをつらく思った。そこで朝は少し早目に食事を済ませて、一足さきに出、晩は少し居残って為事をして、一足遅れて帰ってみた。しかし行き逢う人が自分の方を見て、連れとささやくことはやまなかった。そればかりではない。兄と一しょに歩くときよりも、行き逢う人の態度はよほど不遠慮になって、ささやく声も常より高く、中には声をかけるものさえある。
「見い。きょうは猿がひとりで行くぜ」
「猿が本を読むから妙だ」
「なに。猿の方が猿引きよりはよく読むそうな」
「お猿さん。きょうは猿引きはどうしましたな」
交通の狭い土地で、行き逢う人は大抵識り合った中であった。仲平はひとりで歩いてみて、二つの発明をした。一つは自分がこれまで兄の庇護のもとに立っていながら、それを悟らなかったということである。今一つは、驚くべし、兄と自分とに渾名がついていて、醜い自分が猿と言われると同時に、兄までが猿引きと言われているということである。