Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あべいちぞく

日本の文学 3 森鴎外(二)

森 鴎外

Lisez 日本の文学 3 森鴎外(二) (あべいちぞく) de Mori Ōgai (森 鴎外) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 545 caractères · 140 écrans

Aozora Bunko

光尚が声をかけた。

「十太夫、そちの働きはどうじゃった」

「はっ」と言ったぎり黙って伏していた。十太夫は大兵の臆病者で、阿部が屋敷の外をうろついていて、引上げの前に小屋に火をかけたとき、やっとおずおずはいったのである。最初討手を仰せつけられたときに、お次へ出るところを劍術者新免武蔵が見て、「冥加至極のことじゃ、ずいぶんお手柄をなされい」と言って背中をぽんと打った。十太夫は色を失って、ゆるんでいた袴の紐を締め直そうとしたが、手がふるえて締まらなかったそうである。

光尚は座を起つとき言った。「皆出精であったぞ。帰って休息いたせ」

竹内数馬の幼い娘には養子をさせて家督相続を許されたが、この家はのちに絶えた。高見権右衛門は三百石、千場作兵衛、野村庄兵衛は各五十石の加増を受けた。柄本又七郎へは米田監物が承って組頭谷内蔵之允を使者にやって、賞詞があった。親戚朋友がよろこびを言いに来ると、又七郎は笑って、「元亀天正のころは、城攻め野合せが朝夕の飯同様であった、阿部一族討取りなぞは茶の子の茶の子の朝茶の子じゃ」と言った。二年立って、正保元年の夏、又七郎は創が癒えて光尚に拝謁した。