Classiques japonais avec furigana
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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
Lisez 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) de 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 306 caractères · 300 écrans
私も、二人が大事にしてくれるからといって、あまり好い気になって、いつまでもそこにいては外聞もあるし、母子の者が迷惑するであろうとは思いながらも、居心が好いので、すっかり心が落ち着いていた。女も打ち融けて、よく、私が凭っている机の傍に来て坐って、自分もそこで楽書きなどをしたりしてよく話していた。そして、そこが居心地の好いことを私がまたしても繰り返していうと、
「そんなによかったら、ここをあんたはんのまあにしときまひょうか」
「まあとは。……ああ間か、ああどうぞ居間にしておいてもらいたい」
などといっていたが、日は瞬く間に経って、そこに来てから半月ばかりして、私は六月の中旬しばらく山陰道の方の旅行をしていた。けれど、梅雨のころの田舎は悒欝しくって、とても長くは辛抱していられないので、京都の女のいる二階座敷の八畳の間が、広い世界にそこくらい住み好いところはないような気がするので、いずれ夏には紀州の方の山の上に行くつもりではあるが、一週間ばかりして、またそこへ舞い戻って来た。
その日は欝陶しい五月雨のじめじめと降りしぶいている日であった。ステーションからすぐ俥で女の家に帰って来て、薄暗い入口をはいって、玄関から音なうと、階下の家主の老女はもとより、上も下も家中みんな留守と思われるほどひっそりとしている。