Classiques japonais avec furigana
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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
Lisez 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) de 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 306 caractères · 300 écrans
れるので、一日内にとじ籠もっているよりもと思って出かけていったが、一週間ほど不在といいおいていって、まだ三、四日にしかならぬのであるから、老婦人はまだ帰っていない。相変らず門の扉にはさびしく錠がおろしてある。するとその路次の中に立っていると、そこへ路次の入口の米屋の女房が共用水道の水を汲みに出てきたので、そのおかみは東京者で、一度も口をきいたことはなかったが、夏の初め以来、顔だけ見知っていたので、もちろん先きでは、これが、あそこの二階にいる女の旦那と思って、こちらよりも一層注意して見ていたかも知れぬ。それで、そのおかみに、
「ここのお婆さんはお留守でしょうか」と、昨日も出口の店屋で訊いているので無駄だと知りつつも、そう言って訊ねると、おかみは、バケツを提げたまま、
「あの、あそこの二階にいたお婆さんですか」と、門の外から女のいた二階の方を指さしながら、訊き返した。それで私は腹の中で、階下のお婆さんのことを訊ねたのだが、それを訊くのも、やっぱり階上にいた女の母親のことを訊ねようとてであるから、これは、うまい具合だと思って、
「ええそうです」と、いうと、
「あのお婆さんは、つい五、六日前に、すぐそこの、安井の金比羅様のあちら側にお越しになりました」