Classiques japonais avec furigana
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いも
日本プロレタリア文学集・11 「文芸戦線」作家集(二)
佐左木 俊郎
Lisez 日本プロレタリア文学集・11 「文芸戦線」作家集(二) (いも) de 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 26 241 caractères · 54 écrans
モセ嬶は、喫驚して、杖にして居た坏を握り直して、蛇を追いたてた。
黒い蛇は、どんなに追っても逃げない。彼女は坏を前に突出して、おそるおそる近寄って見た。するとそれは、水分を含んで、黒土に染った太い手綱の切端であった。彼女はちょっと恵まれたような気がした。
「神様の、おなさけだべちゃあ! あきよ嬶様が、喫驚しさせっと、瘧は癒るとて教せだっけ。この手綱の切端で喫驚しさせで……」と呟いて、モセ嬶は、その黒く汚れた手綱の切端を引摺って、細い山路を、短い青草を踏みつけながら帰って来た。
福治爺は、豚小屋のような、小さくって穢い家の中で、炉端に犬の皮を敷いて、垢に汚れたどてらを著込んで、梟が身顫いした時のように、丸くなって、焚火に腹を焙って居た。
「なんぼか、掘って来たか?」と彼は、胸のところをはだけて、焚火の上に突出しながら言った。
「ろくな芋無えがった……」
モセ嬶は、坏と芋を竈のところに置いて、福治爺の傍へ寄って行った。
「ほだども。仲仲掘れるもんでねえ、慣れねえうぢ……」
「それ代り、蛇とって来た。それ蛇!」と彼女は、彼の首へ、蛇のような形と色と、ひやりっとした肌触りの、汚れた縄切れを捲きつけた。