Classiques japonais avec furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lisez 日本婦道記 (にほんふどうき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 15 091 caractères · 30 écrans
彼は眼を瞠ってお石の顔をみつめたが、やがて頭を振りながら非難するようにこう云った、
「あなたが誰の子であるか、どういう身の上かということは私も知らず、母でさえ聞いてはいなかった、父はなにも云わず、なんの証拠も遺さずに死んだ、あなたの素性は誰にもわかる惧れはなかったのですよ」
「そうかも知れません」
お石はそっと頷いた、
「仰しゃるとおりわからずに済むかも知れません、けれど万一ということが考えられました、知れずに済めばようございますけれど、万一にも知れたとしたらどう致しましょう、たとえ人は知らずとも、わたくし自身はよく知っていたのですから」
そうだ、それを否定することはできない。平之丞は三十二歳のときの災難を思いだした。人の讒訴に依って老臣の鞠問をうけたときのことを、――あのときもしお石を妻にしていたら。そしてもしお石の素性がわかったとしたら、そう考えるともううち消す言葉もなく、しずかに頭を垂れ、眼をつむった。
「それではもし、そういう事情さえなかったら、あなたは私の妻になって呉れたろうか」
「自分の身の上を知ったのは十三歳のときでございました、そのときはじめて父の遺書を読んだのでございます、そして、平之丞さまをお好き申してはいけないのだと、幼ないあたまで自分を繰返し戒めました、いま考えますとまことに子供らしいこと