Classiques japonais avec furigana
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にほんだっしゅつき
日本脱出記
大杉 栄
Lisez 日本脱出記 (にほんだっしゅつき) de 大杉 栄 (おおすぎさかえ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 76 254 caractères · 151 écrans
するとヨーロッパのどこに、その可能性のあるところがあるんだろう。ウィーンという一説もあるが、それもどうやらあぶないらしい。
愚図愚図している間に、金はなくなる。風をひいて、おまけに売薬のために腹をこわす。無一文のまま、一週間ばかり断食して、寝て暮した。
ようやく起きれるようになって思いがけなく家から金が来たと思うと、こんどはまた例の日参だ。あした、あさってと言われるのにも飽きて、少々理窟を並べると、フランス人の癖の両方の肩を少しあげて、「俺あそんなことは何にも知らねえ」と言ったまま相手にならない。その肩のあげかたと、にやにやした笑顔の癪に触るったらない。行くたびにむしゃくしゃしながら帰って来る。
春にはなる。街路樹のマロニエやプラタナスが日一日と新芽を出して来る。僕は郊外の小高い丘の上にいたのだが、フランスの新緑には、日本のそれのようには黒ずんだ色がまじっていない。ただ薄い青々とした色だけだ。その間に、梨子だの桜だののいろんな白や赤の花が点せつする。そして、それを透かして、向うの家々の壁や屋根の、オランジュ・ルウジュ色が映える。それは、ほんとうに浮々とした、明るい、少しいやになるくらいに軽い、いい景色だ。