Classiques japonais avec furigana
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はやみみさんじとりものききがき
早耳三次捕物聞書
林 不忘
Lisez 早耳三次捕物聞書 (はやみみさんじとりものききがき) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 640 caractères · 21 écrans
嘘をついているものとも見えないので三次はすっかりあて外れの形だったが、それでも一応昨夜の動きを訊いてみると、いつものとおり饂飩の屋台車を押して歩いて明方に帰ったと答えた。
「帰った時に戸口の血やこの下駄に気がつかなかったかえ。」
「暗え中を手探りで上ってすぐと床に潜込みやしたから、何にも気が付きませんでした、へえ。」
三次は家のなかを見渡した。なるほど男鰥夫の住居らしく散らかってはいたが、さして困っている生計とも思われない。女房を失くした淋しさから櫛をやったりしてお菊の歓心を買うに努めていたものとみえる。小道具といい身のまわりといい饂飩屋風情にしてはちょっと小ざっぱりしすぎているような気がしないでもなかった。
「のう辰さん。」三次が言った。「饂飩もなかなか上金が大けえもんと見えますのう。」
「へ? へえ、おかげさまで、へえ。」
「車はどこにありますい。」
「仕込問屋に預けてありやす。」
「その問屋ってなあどこですい。」
「その問屋は――。」
「うんその問屋は?」
「へえ、蔵前の――。」
「うん。蔵前の何屋何兵衛だ。」
とこう突っ込まれて、辰はぐっと詰ってしまった。それを見ると、三次は脅し半分に腕を伸ばして辰の肩口を掴んだのだが、掴まれた辰よりもかえって掴んだ三次のほうが吃驚した。