Classiques japonais avec furigana
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はやみみさんじとりものききがき
早耳三次捕物聞書
林 不忘
Lisez 早耳三次捕物聞書 (はやみみさんじとりものききがき) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 640 caractères · 21 écrans
さすが鉄火な早耳三次、血泥を掴んだまましばらくそこにへたばっていたが、やがてふらふらと立上ると、
「どこのどなた様か存じませんがあっしは少し急ぎます。成仏なすって下せえやし――南無阿弥陀仏。」
も口の中、耳も早けりゃ脚も早い、おりから風さえ加わって横ざまに降りしきる霙を衝いて、三次は驀地に駕籠を追って走った。
定火消を右に見てあれから湯島四丁目へかかると藤堂様のお邸がある。追いついたのは聖堂裏であった。そのころは杉の大木が繁っていてあそこらは昼でも薄気味の悪いところ、ましてや夜。人通りはない、先へ行く駕籠のぴしゃ、ぴしゃという草鞋の音を頼りに、駕籠に道の左側を往かしておいて三次は右側を擦り抜けたが、五、六間前へ出るあいだまったく生きた心地はしなかった。と、何者かがすがり寄る気を感じて、三次は足をとめた。その瞬間、一陣の寒さが首筋を撫でた。三次は背後へ飛び退った。見ると、すぐ前に、黒の着流しに宗十郎頭巾で顔を包んだ侍が、片手に細長い白い棒のような抜身を下げて、片手で霙を除けながら煙のように立っている。駕籠は遙か向うに下りて、草鞋の音も聞えなかった。