Classiques japonais avec furigana
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めいじのせんそうぶんがく
明治の戦争文学
黒島 伝治
Lisez 明治の戦争文学 (めいじのせんそうぶんがく) de 黒島 伝治 (くろしまでんじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 887 caractères · 24 écrans
しかし折角、兵卒に着目しながら、花袋は、生と死を重視する生物としての人間をそこに見て、背後の社会関係や、その矛盾の反映し凝集した兵卒は見つけ出さなかった。また、見つけようともしなかった。そこに、自然主義者としての花袋の面目もある訳だが、それだけに、戦場の戦闘開始前に於ける兵士や部隊の動きや、満洲の高粱のある曠野が、空想でない、しっかりした真実味に富んだ線の太い筆で描かれていながら、一つの戦地の断片に終って、全体としての戦争は浮びあがらない。自然主義文学に共通の特色をなす、全体的なことを書きながらも、その中の個の追求が、こゝでも主眼となっている。幾分、地主的匂いがたゞよっている。
一兵卒の死の原因にしても、長途の行軍から持病の脚気が昂進したという程度で、それ以上、その原因を深く追求しないで、主人公の恐ろしい苦しみをかきながら、作者は、ある諦めとか運命とかいうものを見つけ出そうとしている。脚気は戦地病であるが、一兵卒の死だって、もっとその原因を深く追求すれば、憤慨に値することに突きあたらざるを得ないのである。
けれども「一兵卒」は、明治以来の日本の文学に、初めて真面目に戦争に取材した小説を提供したものとして、歴史的にまず指を屈しなければならない。