Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ひるのはなび

昼の花火

山川 方夫

Lisez 昼の花火 (ひるのはなび) de 山川 方夫 (やまかわまさお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 030 caractères · 15 écrans

Aozora Bunko

レフトが塀際から返球する。観客は総立ちの熱狂ぶりだ。その底に石のように取り残され、彼は疼くように、固い一個の自分だけを感じていた。彼は、泳ぐような気持ちになった。

ひしめきあう人ごみの混雑のあいだを、がむしゃらに、盲めっぽうにかきわけ、突き進んでいるみたいな、行先も不明な、ただ人知れず自分を主張したい、そんな孤独な感情の動きだった。

打者は二塁にいる。女が拍手している。

「ねえ、よせよ。ヒット打ったのは、一塁側の選手なんだよ」

「……いけないの? ちがうの?」

「いけなかないけど、見てごらん、こっちは三塁側だろ? 誰も手をたたいてないだろ?」

「あら。ほんと」

笑いあって、だが、たぶん今日が、この女とみる花火の最後かもしれない、と彼は思った。いまに、目前の、この現実の細かな部分や出来事などはすっかり忘れ果てて、僕はきっと、すべてのこの季節の記憶を、一つの花火のそれとして眺めるのだ。

でも、僕の花火には、漆黒の夜の花床は無い。青春のその花床は、昼の光に充ちた青空が、それのはずではないか。

固い板の座席に、腰が痛んでいた。

坐り直しながら、彼は、頭上のひろびろとした青空を仰いだ。