Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 47 663 caractères · 97 écrans
半七は白い息を噴きながら、愛宕下へ急いで行った。
「どうだ、熊。あれぎり変ったことはねえか」
「親分。お吉の奴は駈け落ちをしたようですよ。とうとうあれぎりで家へ帰らねえそうで、今朝おふくろが心配らしく訊きに来ましたよ」と、熊蔵は顔をしかめてささやいた。
「そうか」と、半七の額にも太い皺が描かれた。「だが、まあ仕方がねえ。もう一日気長に網を張っていてみよう。もう一人の奴がやって来ねえとも限らねえから」
「そうですねえ」と、熊蔵は張り合い抜けがしたようにぼんやりしていた。
半七は二階にあがると、けさはお吉がいないので其処には火の気もなかった。熊蔵の女房が言い訳をしながら火鉢や茶などを運んで来た。朝のあいだは二階へあがる客もないので、半七は煙草をのみながら唯ひとりつくねんと坐っていると、春の寒さが襟にぞくぞくと沁みて来た。
「お吉の奴め、この頃は浮わついているんで、障子も碌に貼りゃあがらねえ」と、熊蔵は窓の障子の破れを見かえりながら舌打ちした。
半七は返事もしないで考えつめていた。おととい此の二階で発見した人間の首、動物の頭、きのう日蔭町で見た泥鮫の皮、それが一つに繋がって彼の頭の中を走馬燈のようにくるくると駈け廻っていた。