Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 201 612 caractères · 405 écrans
半七もほかの仕事に忙がしく追われていたが、それでも彼の頭にはまだこの一件がこびり付いていて離れなかった。
「あの船頭はどうした」と、半七はときどきに催促した。
「親分も執念ぶけえね」と、幸次郎は笑っていた。「わっしも如才なく気をつけてはいますが、どうもなんにも当りがねえんですよ」
「その客というのもそれぎり来ねえか」
「それぎり顔をみせねえそうです」
こうして四月も過ぎ、五月になって、梅雨らしい雨が毎日ふりつづいた。五月十日の朝である。半七がいつもよりも少し朝寝をして、楊枝をつかいながら縁側へ出ると、となりの庭の柘榴の花があかく濡れていた。外では稗蒔を売る声がきこえた。
「ああ、きょうも降るかな」
鬱陶しそうに薄暗い空をみあげていると、表の格子をがたぴしと明けて、幸次郎があわただしく飛び込んで来た。
「親分。起きましたかえ」
「いま起きたところだ。何かあったか」
潮干狩の一件以来、幸次郎は半七に催促されるのが苦しいので、築地河岸の船頭はいうまでもなく、芝浦から柳橋、神田川あたりの船宿をまわって、絶えず何かの手がかりを見つけ出そうと焦っているうちに、けさ偶然にこんなことを聞き出したのである。