Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(三)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 201 612 caractères · 405 écrans

Aozora Bunko

更によく視ると、其蝶はその右の手の小指を紙で巻いているらしかった。半七はふと思い出した。お葉の死骸の左の小指にも小さい膏薬が貼ってあった。検視の時には誰も格別の注意を払わなかったのであるが、其蝶が右の小指を痛めているのを見ると、両方のあいだに何か関係がないとも云えない。半七はもう一度お葉の死骸をあらためて見たいと思ったが、死骸に手をつけるには自分の身分を明かさなければならないので、彼は又すこし躊躇した。しかしいつまで睨み合っていても際限がないので、半七は更に伸びあがって声をかけた。

「もし、其蝶さん」

呼ばれても彼は俯向いたままで返事もしなかった。

「其蝶さん。この方が呼んでいますよ」

かの女房にも声をかけられて、其蝶は初めて顔をあげた。かれは大勢のなかを掻きわけて台所へ出て来た。

「どなたでございますか。どうぞこちらへ」と、彼はうす暗いところを透かしながら丁寧に云った。

「少しおまえさんにお願い申したいことがあります。わたしは神田の半七という者だが、御用でその死骸をあらために来ました」

「左様でございますか」と、其蝶はやや慌てたらしく答えた。

「なに、ちょいと覗かして貰えばいいんですから」