Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(二)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 215 865 caractères · 432 écrans

Aozora Bunko

「それでもさっきのあの川っ縁で大根を洗っていたぜ」と、半七は云った。

「まあ、その位のことはするでしょうけれど……」と、女房はほほえんだ。「ここらにいれば其のくらいのことは当りまえですもの。それで何でも以前の旦那様というのが時々たずねていらっしゃるんですよ」

「あすこの家へ来るのかえ」

「いいえ、親たちは堅い人ですから、そんなことは出来ません。この先の辰さんの家で、ほほほほほ」

いくらか法界悋気もまじって女房はこんな秘密までもべらべらしゃべった。辰蔵というのは小料理屋の亭主であるが、身持ちのよくない人間で小博奕も打つ男である。料理屋といっても、家には老母と小女がいるきりなので、お杉はどんなふうに頼み込んだか知らないが、その家を逢い曳きの場所に借りて、ときどきに旧主人に逢っている。それを近所ではみんな知っているが、お杉の親たちは不思議に知らないらしい。知れたらきっとなにかの面倒が起るであろうと女房は仔細らしく話した。

「なるほど、そいつは粋事だね。不動前まで行ったら、もっといい茶屋もあるだろうに……」と、半七は笑った。多寡が百俵取りで、おまけに道楽者の吉見としては、金廻りが悪いに相違ない。