Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 215 865 caractères · 432 écrans
入口の花屋で要りもしない線香と樒を買って、半七はそこの小娘にそっと訊いた。
「ここのお住持はなんという人だえ」
「覚光さんといいます」
「本所からお国さんという髪結さんが時々来るかえ」
「ええ」と、娘はうなずいた。
「泊まって行くこともあるかえ」
娘はだまっていた。
「それから、やっぱり本所の方から尼さんが来やあしないかえ」
「ええ」と、娘は又うなずいた。
「なんという人だえ」
娘はなにか云おうとする時に、婆さんが手桶をさげて帰って来た。かれは娘を眼で制しながら、半七らに向ってひと通りの世辞などを云い出した。そのうちに又ひと組の参詣人が花や線香を買いに来たので、半七は思い切って店を出た。
「この線香をどうしますえ」と、熊蔵は小声で訊いた。
「捨てるわけにも行くめえ。無縁の仏にでも供えて置こう」
残暑の強い此の頃ではあるが、墓場にはもう秋らしい虫が鳴いていた。半七は何物かをたずねるように石塔のあいだを根気よく縫い歩いていると、墓場の奥の方に紫苑が五、六本ひょろひょろ高く伸びていて、そのそばに新らしい卒堵婆が立っているのを見つけた。卒堵婆は唯一本で、それには俗名も戒名も書いてなかったが、きのう今日に掘り返された新らしい墓であることはひと目に覚られた。