Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(二)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 215 865 caractères · 432 écrans

Aozora Bunko

その前に立っている卒堵婆もあまり古いものではないらしく、花筒には野菊の新らしい花がたくさん生けてあった。長次郎は銀蔵を見かえって訊いた。

「あれはどこの墓だね」

「あれかね」と、銀蔵は伸び上がりながら指さした。「あれはおこよ坊の墓ですよ」

「花がたくさん供えてあるじゃねえか。おこよというのは、このあいだ身を投げた娘だろう。違うかね」

「そうですよ。可哀そうなことをしましたよ」

ふたりの足はおのずとその墓の前に立った。

「おこよの死んだのはいつだっけね」

「先月……ちょうど十五夜の晩でしたよ」

「十五夜か」と、長次郎はすこし考えていた。「一体あの娘はどうして死んだんだ。いい娘だったという噂だが……」

「川のふちへ芒を取りに行って滑り込んだというんだがね。世間じゃあいろいろのことを云いふらす者もあって、何がなんだか判らねえ」

「どんなことを云い触らすんだね」

云いながら長次郎は身をかがめて、又もやその墓のまわりを身廻していた。

「仏に疵をつけるのはいけねえことだ」と、銀蔵は溜息をついた。「まして若けえ娘っ子に……。あんまり可哀そうで滅多なことは云われねえ」

かれは固く口をつぐんで、その以上のことは何にも云わなかった。