Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 215 744 caractères · 434 écrans

Aozora Bunko

下手人は物蔭に窺っている幸次郎のすがたを見て、一目散に逃げてしまった。

次は二月二十八日の朝、築地南小田原町の河岸に心中の男女の死骸が発見された。それは彼の三河屋の前の河岸につないである屋根船のなかの出来事で、その船は浅井の屋敷の人々を沈めたという因縁つきの物である。浅井の一件が落着次第、当然焼き捨てらるべき船のなかで、更に第二の悲劇が演ぜられたのは、いわゆる呪いの船とでも云うべきであろうか。

しかもこの心中は噂ばかりで、その実際を見とどけた者は少なかった。その噂を聞き伝えて見物人が寄り集まって来る頃には、二つの死骸はすでに取り片付けられて、形見の船が春雨に濡れているばかりであった。

「心中は綺麗な若いお武家と、若い女だ」

それを見た者は云い触らした。男は十七八の美しい武士で、女は二十歳前後の、武家奉公でもしていたらしい風俗である。二人は船のなかに座を占めて、男は脇差で先ず女を刺し殺し、自分も咽喉を掻き切って死んでいた。

そのうちに、又こんな噂をする者もあらわれた。

「男は近所の浅井さまの御子息らしい。女は三河屋のお信だ」

前にも云う通り、二つの死骸は早くも取り片付けられてしまったので、それらの事も結局は噂ばかりに留まったが、その噂の嘘でないことを半七は知っていた。