Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 215 744 caractères · 434 écrans

Aozora Bunko

三

鳳閣寺の境内を出て、半七は更に久保町へむかった。ここらにも町名主の玄関はある。半七はその玄関をおとずれて町役人に逢い、かの片腕の一件についてひと通りのことを訊きただしたが、庄太の報告以外に新らしい発見もなかった。唯ここで少しく意外に感じたのは、疑問の唐人飴屋がきのうも平気でここへ姿をあらわしたという事であった。しかも其の両手は満足に揃っているというのである。

「あの飴屋は毎日いつごろ廻って来ます」と、半七は訊いた。

「大抵八ツ(午後二時)頃です」

八ツまではまだ半ときほどの間がある。そのあいだに遅い午飯を食うことにしたが、ここらの勝手をよく知らない半七は、迂濶なところへ飛び込むのは気味が悪いと思って、当座の腹ふさぎに近所の蕎麦屋へはいると、ほかに一人の客もなかった、注文の蕎麦の出来るのを待つあいだ、煙草を吸いながら見まわすと、くすぶった壁には彼の坂東小三の芝居のビラが掛けてあった。

店は狭いので、釜前に立ち働いている亭主はすぐ眼のさきにいる。半七はビラを見返りながら亭主に声をかけた。

「小三の芝居はなかなか景気がいいね」

「ご見物になりましたか」