Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 831 caractères · 396 écrans
「黒沼伝兵衛という侍が死んでいたと云うのは、どの辺だ」
「そこの寺の前ですよ」
留吉が指さす方に或る物を見いだして、吉五郎は口のうちで叫んだ。
「あ、蝶々だ」
「むむ。蝶々だ」
ふたりは白い影を追うようにあわてて駈け出した。
八
闇にひらめく蝶のかげを追いながら、吉五郎と留吉は先きを争って駈け出したが、吉五郎の方が一と足早かった。彼はふところから四つ折りの鼻紙を取り出して、蝶を目がけてはたと打つと、白い影はそのまま消え失せてしまった。
「たしかに手応えはあったのだが……」と、吉五郎はそこらを透かして見まわしたが、提灯を持たない彼は、暗い地上に何物をも見いだすことが出来なかった。
「そこらへ行って蝋燭を買って来ましょう」と、留吉は土地の勝手を知っていると見えて、すぐにまた駈け出した。
寺門前には小さい商人店が五、六軒ならんでいる。表の戸はもう卸してあったが、戸のあいだから灯のひかりが洩れているので、留吉はその一軒の荒物屋の戸を叩いて蝋燭を買った。裸蝋燭では風に吹き消される虞れがあるので、小さい提灯を借りて来た。
その提灯のひかりを頼りに、ふたりはそこらの地面を照らして見たが、蝶らしい物の白い影はどこにも見あたらなかった。