Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 217 272 caractères · 434 écrans
「あの、ちょいと伺いますが、神明様はこの辺でございましょうか」と、女は訊いた。
「神明様……。徳住寺のかえ」と、元八は月あかりに女の顔をのぞきながら答えた。「徳住寺へ行くなら、あと戻りだ」
「行き過ぎましたか」
「むむ、行き過ぎたね」と、元八はまた答えた。「これから半町ほどもあと戻りをして、往来へ出たら右へ曲がるのだ」
「ありがとうございます」
女は会釈して引っ返して行った。手ぬぐいに顔を包んでいながらも、それが年の若い色白の女であることを元八は認めたので、暫くたたずんで彼女のうしろ姿を見送っていた。
「ここらで見馴れねえ女だ。狐が化かしにでも来たのじゃあねえかな」
化かす積りならば、そのまま無事に立ち去る筈もあるまいと思うに付けて、ほろよい機嫌の道楽者は俄かに一種のいたずらっ気を兆した。彼は藁草履の足音をぬすみながら、小走りに女のあとを追ってゆくと、女はそんなことには気が付かないらしく、これも夜露を踏む草履の音を忍ばせるように、俯向き勝ちに辿って行った。月が明るいので見失う虞れはないと、元八も最初はわざと遠く距れていたが、往来へ近づくに従って彼は足を早めた。