Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 217 272 caractères · 434 écrans
女は船のまん中に乗った。半七と庄太は舳先に乗った。やがて向うの堤に着いて、江戸の方角へむかって歩きながら、半七は小声で云った。
「おい、庄太。あの女はなんだか見たような顔だな」
「わっしもそう思っているのだが、どうも思い出せねえ。堅気じゃありませんね」
「今はどうだか知れねえが、前から堅気で通して来た女じゃあねえらしい」
「小股の切れ上がった粋な女ですね」
「それだから火を借りに行ったのじゃあねえかえ」と、半七は笑った。
「まあ、まあ、そんなものさ」
庄太も笑いながら後を見かえると、女は雪どけ道に悩みながら、おなじく江戸へむかって来るらしかった。町屋から蒲田へさしかかって、梅屋敷の前を通り過ぎたが、あまり風流気のない二人はそのまま素通りにして、大森に行き着くと、名物の麦わら細工を売る店のあいだに、休み茶屋を兼ねた小料理屋を見つけた。
「親分。少し休ませて貰えねえかね。寒くってどうにもこうにも遣り切れねえ」と、庄太は泣くように云った。
「一杯飲みてえのか。まあ、附き合ってやろう」と、半七は先に立って茶屋へはいった。
奥には庭伝いで行けるような小座敷もあったが、坐り込むと又長くなるというので、二人は店口の床几に腰をおろして、有り合いの肴で飲みはじめた。