Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 217 272 caractères · 434 écrans

Aozora Bunko

その間に半七は垣を破って内へ駈け込むと、破れ畳にもなまなましい血が流れて、うす暗い家のなかに幽霊のような若い女が、さながら喪神したようにべったりと坐っていた。坐るというよりも半分は倒れたようなしどけない姿で、手には匕首を握っていた。しかもそれが相当の武家の奥方とでも云いそうな人柄であるので、半七も少し躊躇した。

「あなたはどなたでございます」

女は黙っていた。

「あの男はあなたがお手討ちになったのですか」

女はやはり黙っていたが、やがて気がついたように匕首をとり直して、自分の咽喉に突き立てようとしたので、半七は飛びあがって其の手を押さえたが、もう間に合わなかった。彼女の蒼白い頸筋からくれないの血が流れ出した。

五

半七老人はここまで話して来て、例によって「これでお仕舞」というような顔をした。

「その女は何者ですか」と、私は追いすがるように訊いた。

「その女は湯島の化物稲荷……と云っても、この頃の人にはお判りにならないでしょうが、今の天神町の一丁目、その頃は松平采女という武家屋敷の向う角で、そこに化物稲荷というのがありました。なぜ化け物と云ったのか知りませんが、江戸時代には化物稲荷という名になっていて、江戸の絵図にも化物稲荷と出ている位ですから、嘘じゃありません。