Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 217 272 caractères · 434 écrans

Aozora Bunko

それはお才に宛てたもので、自分の不心得を詫びた上に、与兵衛と相談して後の事はよろしく頼むと簡単に書いてあった。

やがて与兵衛も帰って来て、この書置を見せられて驚いた。取りあえず店の者を諸方へ走らせて心あたりを探させたが、多左衛門の消息は判らなかった。多左衛門は一体なんのために家出したのか。一家の主人たるものが女房や番頭に申し訳なさの家出は、あまり気が狭過ぎるように思われるので、更に家内を取り調べると、かねて貯えてあるたくさんの絵馬のうちで、かの正雪の絵馬一枚が紛失していた。彼がその絵馬をかかえて家出したらしいのは、裏口の井戸ばたに洗濯物をしていた女中の証言によって推定された。長さ二、三尺の額のような物を風呂敷につつんで、小脇にかかえて出てゆく旦那様のうしろ姿を見ましたと、女中は云った。

女中や番頭らに対して面目ないという意味も多少はまじっていたかも知れないが、多左衛門が家出の真意は、かの絵馬に対する根強い愛惜であることが想像された。万次郎の運動によって、たとい此の事件が無事に納まるとしても、絵馬を掏り換えたままにして置くことは出来ない。こうなった以上は、どうしても本物を元へ戻さなければならない。