Classiques japonais avec furigana
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ちえこのはんしょう
智恵子の半生
高村 光太郎
Lisez 智恵子の半生 (ちえこのはんしょう) de 高村 光太郎 (たかむらこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 697 caractères · 25 écrans
彼女はお祝にグロキシニヤの大鉢を持って此処へ訪ねて来た。丁度明治天皇様崩御の後、私は犬吠へ写生に出かけた。その時別の宿に彼女が妹さんと一人の親友と一緒に来ていて又会った。後に彼女は私の宿へ来て滞在し、一緒に散歩したり食事したり写生したりした。様子が変に見えたものか、宿の女中が一人必ず私達二人の散歩を監視するためついて来た。心中しかねないと見たらしい。智恵子が後日語る所によると、その時若し私が何か無理な事でも言い出すような事があったら、彼女は即座に入水して死ぬつもりだったという事であった。私はそんな事は知らなかったが、此の宿の滞在中に見た彼女の清純な態度と、無欲な素朴な気質と、限りなきその自然への愛とに強く打たれた。君が浜の浜防風を喜ぶ彼女はまったく子供であった。しかし又私は入浴の時、隣の風呂場に居る彼女を偶然に目にして、何だか運命のつながりが二人の間にあるのではないかという予感をふと感じた。彼女は実によく均整がとれていた。
やがて彼女から熱烈な手紙が来るようになり、私も此の人の外に心を託すべき女性は無いと思うようになった。それでも幾度か此の心が一時的のものではないかと自ら疑った。