Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

げつめい

月明

豊島 与志雄

Lisez 月明 (げつめい) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 772 caractères · 34 écrans

Aozora Bunko

「そうね……。」

暗い海を背景にして仄白く浮出している俊子の顔が、一寸揺れたかと思うと、低いおどけた声で、

「ばアーと云ってやるわ。」

それが変に不気味だった。

「いやな人!」

投げ出すように云った姉の言葉のすぐ後を、彼は横合から続けた。

「この沖にも幽霊船が出ることがあるんですって。」

「嘘!」と云った姉の声は少し慴えていた。

「嘘ではありません。船の姿が見えないのに櫓の音が聞えたり、真黒な帆前船がすーっと側を滑りぬけたりすることが、よくあるんだそうです。」

「それは、風の工合で遠い櫓の音が聞えたり、本当の船をそんな風に感じたりするんだわ。」

「所が変なんです。或る時沖に釣に出た船が、夜になって戻って来たことがあるんです。その漁夫達の話ですが、薄暗くなって帰りかけると、いくら櫓を押しても船がなかなか進まなかったんですって。それでも一生懸命に漕いでると、不思議なことには、一町ばかり離れた後ろの方から、やはりせっせと漕いでくる船があるんです。櫓の音も掛声もしないのに、船の姿や人の影だけがありありと見えていて、その上、近寄りもしなければ遠ざかりもしないで、いつも同じ速さでついて来ます。