Classiques japonais avec furigana
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きのこせっぽう
木の子説法
泉 鏡花
Lisez 木の子説法 (きのこせっぽう) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 17 107 caractères · 34 écrans
……御存じかも知れません、芳年の月百姿の中の、安達ヶ原、縦絵二枚続の孤家で、店さきには遠慮をする筈、別の絵を上被りに伏せ込んで、窓の柱に掛けてあったのが、暴風雨で帯を引裂いたようにめくれたんですね。ああ、吹込むしぶきに、肩も踵も、わなわな震えている。……
雨はかぶりましたし、裸のご新姐の身の上を思って……」
(――語ってここを言う時、その胸を撫でて、目を押える、ことをする。)
「まぶたを溢れて、鼻柱をつたう大粒の涙が、唇へ甘く濡れました。甘い涙。――いささか気障ですが、うれしい悲しいを通り越した、辛い涙、渋い涙、鉛の涙、男女の思迫った、そんな味は覚えがない、ひもじい時の、芋の涙、豆の涙、餡ぱんの涙、金鍔の涙。ここで甘い涙と申しますのは。――結膜炎だか、のぼせ目だか、何しろ弱り目に祟り目でしょう。左の目が真紅になって、渋くって、辛くって困りました時、お雪さんが、乳を絞って、つぎ込んでくれたのです。
(――かなしいなあ――)
走りはしません、ぽたぽたぐらい。一人児だから、時々飲んでいたんですが、食が少いから涸れがちなんです。私を仰向けにして、横合から胸をはだけて、……まだ袷、お雪さんの肌には微かに紅の気のちらついた、春の末でした。