Classiques japonais avec furigana
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きそおんたけのりょうめん
木曽御嶽の両面
吉江 喬松
Lisez 木曽御嶽の両面 (きそおんたけのりょうめん) de 吉江 喬松 (よしえたかまつ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 15 819 caractères · 32 écrans
細い径をすれ違おうとするので、
「ちょっと伺います、西洞までは未だ何里ありましょうか。」と丁寧に訊くと、ちょっと立留ったがそのまま棒立ちになって、一行には目もくれず、何処か遠くの方を見入って、聞耳でも立てているという風で、顔の色は蒼黒く、耳が不思議に大きい。「そう、五里位はあろうかな。」と吠えるような、木の洞の中から出て来るような声でいう。「五里?」驚いた。前の湯では四里と聞かされたのが、二里も来たかと思うのになお五里だという。林務官は言い捨てたままずんずん行ってしまう。後からは筒袖を着て、背板というのを背負った男が附いて行く、すぐ草の中へその後姿は没してしまった。――山や谷はこの時一層音高く鳴り出した。「妙だね。」と何人か言い出した。
「何だか変だね。」
「ほんとの人間かしら。」同じような感じは皆の胸を走った。皆は振返って今行った人たちの後を見ずには得られなかった。
遂に雨となった。
深山の雨、幾千年となく斧の入った事のない深林の雨だ。始めは繋り合う木の葉に遮ぎられているが、次第次第に烈しく落ちて、枝がぬれ、幹がぬれ、草がぬれ、自分らの纏っている糸径がぬれ、果ては衣服にも沁み透る。